少し前に金融庁より「IFRSに関する誤解」という資料が公表されましたが、それについて思った事を少々。

金融庁、IFRSに関する17の「誤解」を公表 - IFRS 国際会計基準フォーラム
金融庁は4月23日、IFRS(国際財務報告基準、国際会計基準)についての17の質問とそれに対する回答を集めた「国際会計基準(IFRS)に関する誤解」と題する文書を公表した(PDF)。「一部に『誤解』を招く情報が流布されているのではないかとの指摘がある」として、文書の公表で正しい理解を得られるようにするという。

まあ、IFRSに関するいろいろな記事が出回るようになって、それらを「ななめ読み」しているだけだと、こういう誤解をしてしまう人も出てくるのかもしれないな、というのはよくわかった気がする。

で、さすがにこれには、あきれた。
3.全面的なITシステムの見直しが必要か
[誤解]IFRSになると、ITシステムを含め、業務プロセス全般について全面的に見直さなければならない。
[実際]既存のシステムの全面的な見直しは、必ずしも必要ではない。
  • IFRSを適用するために必要な範囲で、システムの見直しを行えばよい。
「必要な範囲で」やればいいのは当然。
実際にこんな誤解をしている人がいるからこそ、取り上げているのだろうけど、当たり前過ぎる、アホか、というのが第一印象。
ただ、「見直し」をどういう意味で捉えるかによっては、別に誤解でもない気がする。
「見直し」に「変更が必要かどうかの見極め」も含めるのであれば、「全面的な見直し」はやっぱり必要なんだと思うけど。
その結果として必ずしも「変更」が必要とは限らないわけで。

収益認識の出荷基準の件は、微妙な表現で結局誤解は正せていない気がする。
というか、誤解として挙げつつも誤解ではないとしているというか。
[誤解]IFRSでは、収益の認識基準が我が国とは異なり、我が国でこれまで広く使われていた出荷基準による売上の計上が認められなくなる。
[実際]現在の日本基準は実現主義であり、現在のIFRSの収益認識基準(リスクと便益の買主への移転)に照らし合わせても、ほぼ同様の結果となるが多い。例えば、取引の形態によっては、着荷や検収の事実を一々確認しなくても、出荷の事実をベースに、配送に要する期間等を考慮して、合理的にリスクと便益の移転が認められる場合、その時点で売上の計上ができる場合がある。いずれにせよ、プリンシプルに照らして、個々具体的な事例に即して適切に判断することになる。
結局、出荷した事実のみをもっては売上計上できず、結果として出荷基準そのものは認められないと言っていることになるように思うのだが。

出荷基準は、税務上の観点から採用されたものが簡便的にか財務会計にも適用する事が認められてきたというのが実情というのをどこかで聞いた。出荷で収益認識した方が目先の課税対象が増えるわけだからね。
だから日本の会計基準における収益認識基準自体はIFRSとほぼ同等なので、会計基準の差異というよりは、税務との折り合いを付けて統一した基準でできるか、という問題なのかなという気がする。