これまで6年近くフリーランスのシステムエンジニアとして働いてきましたが、実はこの度フリーランスをやめて、この10月から就職して再び会社員となっていました。就職先は外資系のSIer企業で、いわゆる「ITコンサルタント」という位置づけでの仕事になります。もともと以前やっていたけど、フリーランス時代は離れがちであったERP関連の案件をやっていく事になります。

昨今は「フリーランス」がある意味ではもてはやされているところもあり、そんな世の流れに反するような事と思われるかもしれません。ともかく自分にとっては大きな転機ではあるので、思った所をまとめて書いておこうかな、と思います。まあ、40代半ばのおっさんの再就職話です。世代的には最近時々話題になる「就職氷河期世代」の真ん中ですが、その正社員化の話とかでもないです。まあ、確かに新卒の時に当初の本意通りの就職ができなかったというのはその通りなのですが、むしろそのおかげで、ほぼ未経験ながらIT業界の「底辺」に潜り込んで何とか生き残ってきて、今があるという事ではあります。

1.きっかけはLinkedIn

今回の就職のお話、実は、私の LinkedIn のプロフィールを見てエージェントの方から連絡が来た事がきっかけでした。こういうのも一応「ヘッドハンティング」というのでしょうか。まあ、いわゆる「人材系」のエージェントとかリクルーターから LinkedIn でコンタクトが来る事はよくある事ですが、多くは私のプロフィールの中の「エンジニア」とか、「フリーランス」って所しか読んでないな、というような内容の事が多くて、そういうのは気が向けば丁重にお断りするし、忙しければスルーなんですが、今回のケースではもっと細かい具体的なところまで踏まえて私の経歴に合っている提案をして頂けたので、「先方の会社が私の経歴に興味を持って頂けるなら、話を聞いてみましょう。」と答えてみました。そうしたら「では英文レジュメを送ってください」と言われて、そこから「応募」という事になりました。この辺になると「ヘッドハンティング」というか、「普通に転職活動している人」という感じしかしなくなっていました。まあ、そりゃそうだよね。で、最初に紹介された会社は書類で落ちたようですが、2社目に提案して頂いた会社で面接に呼ばれ、結果Offer Letterを頂き入社することとなったわけです。

私が LinkedIn のプロフィールを登録したのはかなり前の2010年頃で、実際フリーランスになるより前のはずで、その頃から内容を大きくは更新していなかったのですが、なぜだか内容は英語で記載していました。当時はそもそも LinkedIn の日本語のUIがなかったかもしれず、日本語対応した当初もあまりイケていない感じで英語のまま見ていたのはなんとなく覚えていますので、そんな状態に合わせて英語で書いたのだと思いますが、そんな英語でプロフィールを書いていた事がここに来てつながってきた事の一つでした。

こんな感じで今回の就職に至ったわけでして、「もうフリーランスではやっていきたくないので、どこかへ就職したい!」とか思い詰めて頑張って就職活動したわけではなく、本当にたまたまご縁があったので、という事でした。

LinkedIn きっかけで転職が決まったなんて、なかなかコンテンポラリーな転職経験ができたかもと、ちょっとだけ思います。転職サイトでもエージェントでも、何かしら求人案件を持っている所を自分で選んで個々に登録するとかいうのは、転職に向けてそれなりの決意を持って臨む時でないと中々やる気になれないものだと思いますが、LinkedInの場合は、普段はビジネス寄りの内容中心のSNSとして使いつつ、積極的な転職活動に活用することもできるし、必ずしも積極的に転職したいわけではなくても、必要としている側が探しに来てくれたりして、そこで思いもよらなかった機会を得る可能性が格段に広がっているのだなと思いました。

2.何を思って再就職するのか

今回の就職することを決めた最も大きな理由は、今さらながら、外資系で英語が必須になる、という事ですね。仕事内容的にはこれまでの経験等も一定の評価をして頂けつつ、英語のやり取りが必要とされるという事で自分の「コンフォートゾーン」からは引っ張り出されるな、と。そういう感じがすごく面白い、と思ったわけです。

元々は大学時代に英語を「専門」として勉強していたにも関わらず、英語(というか英会話)に対する苦手意識の方が先に立ってしまい、英語が必要となるような仕事に就こうとか積極的には考えてこなかったんですね。英語しかないIT系技術情報などに接して役に立った事くらいならありますが、所詮はその程度。ようやくこの時期になって、それなりに経験を積んで自信を持てる仕事内容で英語の世界に入っていく事になるのは、私にとっての "connecting dots" かもしれないと思いました。その入り口として、日本にいて外資系の会社で英語必須な環境に身を置くのがちょうどよい所なのだと思います。

私が入社したのは、外資系の独立した日本法人という事ではなく、外国企業そのものという事になります。外資系といっても、日本法人としてそれなりの規模がある所だと、既に日本人多過ぎで色んな意味で面白くないんだろうなぁとは前々から思っていました。今回の就職先はグローバルにはかなり巨大な企業ではあるものの、日本でのビジネスは相対的にそれほど大きくないので拡大していきたい、という流れでの、日本での現地採用という事のようです。どうやら日本の顧客と日本語でコミュニケーションできる人を雇いたがっているようではあり、あくまで日本での仕事という事になるのは間違いないですが、とはいえ社内は基本英語なので、そんな状況にも適応できて、専門スキルのある人が求められている、という感じのようです。もはや日本が中心ではなくて、本社から遠く離れた「辺境の地」で細々となんとかやっている、という事を感じるようになるのかな、とか想像してしまいます。まあ、住む場所として、日本は良い所だと思うので、日本に居ながらにして外国企業に雇われ収入を得られるようになるのは、今後に向けては良い事かもな、とも思いました。

その他に、仕事内容としてERP関連に回帰していくという事に関しては、以下の記事に書いていたような所が思いとしてあるかなと思います。随分と前に書いたものだけれども、この辺への考えの基本的な所は、今でもあまり変わっていないかなと思います。


 

3.報酬の話

さて、報酬という事も普通の人の転職においては大事な観点だと思いますが、今回の私の実情としては、今までのフリーランス契約で仕事を続ける方が目先の稼ぎは良かったです。私の場合、フリーランスになる前の会社時代からそれなりに単価は高い方で、この辺は前の会社の営業にも感謝なのですが、フリーランスになってからの単価もその流れで交渉して決まったところがあるので、SIerのスクラッチ開発案件の要員としてはやはり高い方だったはずです。周囲の人の単価は具体的には知りませんけど。で、同じような感じでスクラッチ開発案件にSES契約で入るやり方で、これ以上単価を上げるのは難しいなぁと思っていたところはありました。この先、もっと伸ばすのであれば仕事の請け方を変える必要があるのだけれども、それはそれでハードな道だなぁと思っていました。

そんな事を考えている所に、目先はちょっと下がるかもしれないが、まあなんとかなるだろうレベルでのオファーを頂けたので、だったら面白いと思えて環境が変化する方に行ってみようと決めたわけですね。40代半ばにして全く伝手もなかった会社への転職にしては、それなりに良い条件を頂けたのかなと思います。まあ、今回の募集では年齢は不問でしたが(というか外資系はだいたいそうだと思うが)、ターゲット領域で「実務経験10年以上」みたいな要件が付いてたりしたので、結果的に40代くらいになるのが自然なポジションだとは思います。日本企業のよくありがちなシステムエンジニア系の求人を見てる限りでは、だいたいは年齢要件が付いている時点で私はもうだいたいはアウトだし、提示されている年収レンジを見てしまうと、今さら就職なんてせずにフリーランスでやっていた方が絶対いいわぁって思っていましたけど、「そういうの」よりは良い条件を頂けたと思います。

とはいえ、消費税増税とか東京オリンピック後とか、この先しばらくの間、程度はわかりませんが、経済がシュリンクしそうな感じでもあるので、このタイミングで会社員になるのは良い選択だったと思える事が、もしかしたらあるかもしれないですね。

4.おわりに

さて、こんな感じで新たな環境に入っていくので、また頑張っていきたいと思います。よく話題になるような「SIerの人月商売の闇」みたいな話が、外資系に行ったらどうなるのか、とかもちょっとは気になりますが、正直な所、その辺はあまり期待とかしていないです。「多重下請け構造」みたいな状況は、さすがにあまりないとは思いますが、まあどんな状況にもそれなりに対応はしていけるものと思っています。

自分の場合は、フリーランスになったけど、その先へ何かビジョンを掲げてすごくやりたい事があるわけでもないというのが、徐々にわかってきた。こういう事が徐々にしかわからなかったというのもアレですが、そんななので、まあ、とりあえずフリーランスは「やってみたかったので、やってみた」けど、フリーランスでいる事にそれほど拘りもなくなった、という事ですかね。まあ、ちょっと「飽きた」という事もあるかもしれません。逆に、何らかの事情で会社を去る事になったりしても、またいつでもフリーランスに戻って生活はしていける、という感覚は持っています。生活の為なら、今までと同じような「ゆるい」フリーランスの仕事をすることは、全然難しい事ではないと思っています。

一定期間、フリーランスでいたことは、いろんな意味でよかったなと思っています。子どもが小さい時の子育て等を優先して時間を確保できるようにする為にも大いに意味はあったし、ミニマムに自分の会社を作って活動したことで見えるようになった事もあるかなと。会社員になることで、ある意味での「自由」は少しなくなるのかもしれませんが、私も歳をとって以前とは違った会社との付き合い方とか距離感の取り方もできるようになっていると思いますし、自分は自分のペースでやれることを面白くやっていければよいな、と思っています。

以前にはこんな事も書いていましたが、時と共に考えも変わるものだとは思います。




最後の『フリーランスから会社員に戻る理由』で書いていたような「想像もつかないような面白いオファー」があったのかというと、別にそれほど珍しい話では全然ないですが、とはいえ自分が「面白そう」と思える方向への転換であることは、間違いないです。