The Way to Nowhere

あるITエンジニアの雑文。

仕事

ERP導入SIの課金のあり方についての雑感(答えは特にない)

なんとなくTwitterで軽く書き捨てとこうと思って書き始めたら、全然収まらなくなってしまい、下書きして連投みたいなのもガラではないので、こっちのブログの方に書いておく事にしました。

ERPもクラウドとかSaaS型のものが増えてきて、標準外で行う、いわゆる「アドオン」も、実装には制約が多くなっているんで、あらためて「できるだけ標準に業務を合わせよう」っていう事が色々なプロジェクトで言われている気がする。いやまあ、昔からスローガン的には、ほぼ同じ事を言っていると思うが、SaaSだどOSやミドルウェアのレベルに追加の仕込みができないので、オンプレミスの時ほど自由度高く気軽にアドオンの実装はできないっていうのが実態だったりして、SaaSのコアはしっかり使いつつアドオンする事のハードルが上がっているという側面もあるかなと思う。

そういう事の代わりになのか、SaaSの中にそれなりのカスタマイズ対応できるツールや仕組みを備えるようになってきていて、実質は専用の開発ツールがバンドルされている、と言えることになる。そうすると、「この要件は、標準でバンドルされたそのツールで作れば対応できる。」→「この要件は標準で対応できる。」みたいな売り方・提案のされ方が観測されたりする。

でまぁ、これも昔から同じような話はあったはずだと思うが、改めて思うのは、ERPの導入で「なるべく標準に合わせるようにした方が全体としてコストが抑えられる」って話のはずが、個々の細々とした要件毎に「標準の範囲で対応できると言えれば追加コスト不要」みたいな理解や取決めに魔変換されがちなんだよね。これは、なんとかならんものかね?

そりゃあ、SaaSベンダーに払うサブスク料金とかライセンス料金は追加されないだろうけれども、SI的には普通に要件増えたら、単純なものであっても、その設定してテストしてって工数はかかるわけで、アドオンを作る程ではないとしても、現場的にはコストはかかるんだよ。そして、それらは一つ一つは小さくても積み重なればそれなりモノになる可能性もある。まして、さっきの「バンドルされた開発ツール」での対応はもちろんの事、色々なケースに対応できるように抽象化された機能の場合、その設定パラメータ群をデフォルト設定とは変えて実際の業務要件に合うようにするには、相当な知見や工夫と検証が必要になる事もままあるんだよね。それでもアドオンで何か作るよりはマシだからやるんだけど、結果としてこれは「標準で対応できた事になるから無料」みたいな感じになってしまうのは、色々詰め込まれている中では、なかなかやるせない気持ちになる事がある。まあ気持ちの問題であれば、そういう知見の積み重ねも単価に込めていると考えておけばいいと思うが、現実に「コスト増加」って話を客側に持ってかざるを得ない時は「標準対応と言ってたのになんで追加コスト?」みたいな感じで理解されない。

まぁ、ファンクションコンサルをミニマムでアサインした場合の固定料金は設定せざるを得ないとして、その上でさらに標準機能の範囲であっても、設定やテスト作業として許容範囲を測る指標を持って、それを超えたらまたなんらかの基準で追加課金(見積)の対象にするとかなのかなぁ?でも、それで精緻な基準を作るのも大変だし、結局は客側に理解してもらえなくて、シンプルに「アドオン/カスタマイズ扱いは追加コスト要」、「1本あたり○○万円」みたいなのがお互いにやりやすいのかねぇ?
そうだとすると、「何をアドオン/カスタマイズ扱いにするのか?」の定義の問題になってくるんで、提案の段階から一貫した基準で扱って、デリバリーのプロジェクトの段階で困らないようにして欲しいものです。提案の段階から関わって、意見が言えるようになれればいいんですけどね。

道は険しい。

フリーランスをやめて再就職した話

これまで6年近くフリーランスのシステムエンジニアとして働いてきましたが、実はこの度フリーランスをやめて、この10月から就職して再び会社員となっていました。就職先は外資系のSIer企業で、いわゆる「ITコンサルタント」という位置づけでの仕事になります。もともと以前やっていたけど、フリーランス時代は離れがちであったERP関連の案件をやっていく事になります。

昨今は「フリーランス」がある意味ではもてはやされているところもあり、そんな世の流れに反するような事と思われるかもしれません。ともかく自分にとっては大きな転機ではあるので、思った所をまとめて書いておこうかな、と思います。まあ、40代半ばのおっさんの再就職話です。世代的には最近時々話題になる「就職氷河期世代」の真ん中ですが、その正社員化の話とかでもないです。まあ、確かに新卒の時に当初の本意通りの就職ができなかったというのはその通りなのですが、むしろそのおかげで、ほぼ未経験ながらIT業界の「底辺」に潜り込んで何とか生き残ってきて、今があるという事ではあります。

1.きっかけはLinkedIn

今回の就職のお話、実は、私の LinkedIn のプロフィールを見てエージェントの方から連絡が来た事がきっかけでした。こういうのも一応「ヘッドハンティング」というのでしょうか。まあ、いわゆる「人材系」のエージェントとかリクルーターから LinkedIn でコンタクトが来る事はよくある事ですが、多くは私のプロフィールの中の「エンジニア」とか、「フリーランス」って所しか読んでないな、というような内容の事が多くて、そういうのは気が向けば丁重にお断りするし、忙しければスルーなんですが、今回のケースではもっと細かい具体的なところまで踏まえて私の経歴に合っている提案をして頂けたので、「先方の会社が私の経歴に興味を持って頂けるなら、話を聞いてみましょう。」と答えてみました。そうしたら「では英文レジュメを送ってください」と言われて、そこから「応募」という事になりました。この辺になると「ヘッドハンティング」というか、「普通に転職活動している人」という感じしかしなくなっていました。まあ、そりゃそうだよね。で、最初に紹介された会社は書類で落ちたようですが、2社目に提案して頂いた会社で面接に呼ばれ、結果Offer Letterを頂き入社することとなったわけです。

私が LinkedIn のプロフィールを登録したのはかなり前の2010年頃で、実際フリーランスになるより前のはずで、その頃から内容を大きくは更新していなかったのですが、なぜだか内容は英語で記載していました。当時はそもそも LinkedIn の日本語のUIがなかったかもしれず、日本語対応した当初もあまりイケていない感じで英語のまま見ていたのはなんとなく覚えていますので、そんな状態に合わせて英語で書いたのだと思いますが、そんな英語でプロフィールを書いていた事がここに来てつながってきた事の一つでした。

こんな感じで今回の就職に至ったわけでして、「もうフリーランスではやっていきたくないので、どこかへ就職したい!」とか思い詰めて頑張って就職活動したわけではなく、本当にたまたまご縁があったので、という事でした。

LinkedIn きっかけで転職が決まったなんて、なかなかコンテンポラリーな転職経験ができたかもと、ちょっとだけ思います。転職サイトでもエージェントでも、何かしら求人案件を持っている所を自分で選んで個々に登録するとかいうのは、転職に向けてそれなりの決意を持って臨む時でないと中々やる気になれないものだと思いますが、LinkedInの場合は、普段はビジネス寄りの内容中心のSNSとして使いつつ、積極的な転職活動に活用することもできるし、必ずしも積極的に転職したいわけではなくても、必要としている側が探しに来てくれたりして、そこで思いもよらなかった機会を得る可能性が格段に広がっているのだなと思いました。

2.何を思って再就職するのか

今回の就職することを決めた最も大きな理由は、今さらながら、外資系で英語が必須になる、という事ですね。仕事内容的にはこれまでの経験等も一定の評価をして頂けつつ、英語のやり取りが必要とされるという事で自分の「コンフォートゾーン」からは引っ張り出されるな、と。そういう感じがすごく面白い、と思ったわけです。

元々は大学時代に英語を「専門」として勉強していたにも関わらず、英語(というか英会話)に対する苦手意識の方が先に立ってしまい、英語が必要となるような仕事に就こうとか積極的には考えてこなかったんですね。英語しかないIT系技術情報などに接して役に立った事くらいならありますが、所詮はその程度。ようやくこの時期になって、それなりに経験を積んで自信を持てる仕事内容で英語の世界に入っていく事になるのは、私にとっての "connecting dots" かもしれないと思いました。その入り口として、日本にいて外資系の会社で英語必須な環境に身を置くのがちょうどよい所なのだと思います。

私が入社したのは、外資系の独立した日本法人という事ではなく、外国企業そのものという事になります。外資系といっても、日本法人としてそれなりの規模がある所だと、既に日本人多過ぎで色んな意味で面白くないんだろうなぁとは前々から思っていました。今回の就職先はグローバルにはかなり巨大な企業ではあるものの、日本でのビジネスは相対的にそれほど大きくないので拡大していきたい、という流れでの、日本での現地採用という事のようです。どうやら日本の顧客と日本語でコミュニケーションできる人を雇いたがっているようではあり、あくまで日本での仕事という事になるのは間違いないですが、とはいえ社内は基本英語なので、そんな状況にも適応できて、専門スキルのある人が求められている、という感じのようです。もはや日本が中心ではなくて、本社から遠く離れた「辺境の地」で細々となんとかやっている、という事を感じるようになるのかな、とか想像してしまいます。まあ、住む場所として、日本は良い所だと思うので、日本に居ながらにして外国企業に雇われ収入を得られるようになるのは、今後に向けては良い事かもな、とも思いました。

その他に、仕事内容としてERP関連に回帰していくという事に関しては、以下の記事に書いていたような所が思いとしてあるかなと思います。随分と前に書いたものだけれども、この辺への考えの基本的な所は、今でもあまり変わっていないかなと思います。


 

3.報酬の話

さて、報酬という事も普通の人の転職においては大事な観点だと思いますが、今回の私の実情としては、今までのフリーランス契約で仕事を続ける方が目先の稼ぎは良かったです。私の場合、フリーランスになる前の会社時代からそれなりに単価は高い方で、この辺は前の会社の営業にも感謝なのですが、フリーランスになってからの単価もその流れで交渉して決まったところがあるので、SIerのスクラッチ開発案件の要員としてはやはり高い方だったはずです。周囲の人の単価は具体的には知りませんけど。で、同じような感じでスクラッチ開発案件にSES契約で入るやり方で、これ以上単価を上げるのは難しいなぁと思っていたところはありました。この先、もっと伸ばすのであれば仕事の請け方を変える必要があるのだけれども、それはそれでハードな道だなぁと思っていました。

そんな事を考えている所に、目先はちょっと下がるかもしれないが、まあなんとかなるだろうレベルでのオファーを頂けたので、だったら面白いと思えて環境が変化する方に行ってみようと決めたわけですね。40代半ばにして全く伝手もなかった会社への転職にしては、それなりに良い条件を頂けたのかなと思います。まあ、今回の募集では年齢は不問でしたが(というか外資系はだいたいそうだと思うが)、ターゲット領域で「実務経験10年以上」みたいな要件が付いてたりしたので、結果的に40代くらいになるのが自然なポジションだとは思います。日本企業のよくありがちなシステムエンジニア系の求人を見てる限りでは、だいたいは年齢要件が付いている時点で私はもうだいたいはアウトだし、提示されている年収レンジを見てしまうと、今さら就職なんてせずにフリーランスでやっていた方が絶対いいわぁって思っていましたけど、「そういうの」よりは良い条件を頂けたと思います。

とはいえ、消費税増税とか東京オリンピック後とか、この先しばらくの間、程度はわかりませんが、経済がシュリンクしそうな感じでもあるので、このタイミングで会社員になるのは良い選択だったと思える事が、もしかしたらあるかもしれないですね。

4.おわりに

さて、こんな感じで新たな環境に入っていくので、また頑張っていきたいと思います。よく話題になるような「SIerの人月商売の闇」みたいな話が、外資系に行ったらどうなるのか、とかもちょっとは気になりますが、正直な所、その辺はあまり期待とかしていないです。「多重下請け構造」みたいな状況は、さすがにあまりないとは思いますが、まあどんな状況にもそれなりに対応はしていけるものと思っています。

自分の場合は、フリーランスになったけど、その先へ何かビジョンを掲げてすごくやりたい事があるわけでもないというのが、徐々にわかってきた。こういう事が徐々にしかわからなかったというのもアレですが、そんななので、まあ、とりあえずフリーランスは「やってみたかったので、やってみた」けど、フリーランスでいる事にそれほど拘りもなくなった、という事ですかね。まあ、ちょっと「飽きた」という事もあるかもしれません。逆に、何らかの事情で会社を去る事になったりしても、またいつでもフリーランスに戻って生活はしていける、という感覚は持っています。生活の為なら、今までと同じような「ゆるい」フリーランスの仕事をすることは、全然難しい事ではないと思っています。

一定期間、フリーランスでいたことは、いろんな意味でよかったなと思っています。子どもが小さい時の子育て等を優先して時間を確保できるようにする為にも大いに意味はあったし、ミニマムに自分の会社を作って活動したことで見えるようになった事もあるかなと。会社員になることで、ある意味での「自由」は少しなくなるのかもしれませんが、私も歳をとって以前とは違った会社との付き合い方とか距離感の取り方もできるようになっていると思いますし、自分は自分のペースでやれることを面白くやっていければよいな、と思っています。

以前にはこんな事も書いていましたが、時と共に考えも変わるものだとは思います。




最後の『フリーランスから会社員に戻る理由』で書いていたような「想像もつかないような面白いオファー」があったのかというと、別にそれほど珍しい話では全然ないですが、とはいえ自分が「面白そう」と思える方向への転換であることは、間違いないです。

"Done is better than perfect"?

最近は「業務の効率化」とか「生産性の向上」とかを意識してなのか、あまり時間をかけないのだけれども、結果的には単に「雑な仕事」になっているだけではないかと思う事案が多くなっている気がする。

しかしながら、それでも「それなりに優秀な人」達同士だと、そんな「雑な仕事」の投げ合いであっても、「それなりに」うまく回るのだ、という事も合わせて目撃するようになってきた。一つ一つ作業が「雑」なので、全体的に通して効率がよいわけではないようにも思うが、関わっている人が「わかる人」だと、各自のゴールに近づく為に必要なリアクションをとってくれるので、それなりに回っていく、という感じなんでしょうかね。


そういう場合には、ともかくなるべく早く「終わったこと」にして、自分の手から放していく、という事になるわけで、まあ実際のところ大量の仕事を捌くには、少なくとも考え方としては、そうするしかないのかな、とも思う。

まあ、こういうのも

Done is better than perfect.


というやつになるんですかね。

また、「どの程度雑な仕事の振り方が許容されるか」は相手によるので、本来はその辺の間合いを相手により微妙に調節しながらやっていくものだと思う。つまり、雑に仕事を振っても「できない人」にはできない、という事。で、その辺の相手による微調整をあまりしていないな、と感じる時に、「雑だ」という印象を受けるのかもしれない。


「会社を辞めて自由に生きる」には

個人的には懐かしい分裂勘違い君劇場の「ド正論」ですね。

Twitterでこの記事のキッカケになったであろう「炎上事象」もある程度は見てましたが、まあそっちのサロンがどうとかの話はどうでもよいですね。

「会社を辞めて自由に生きたい人」にありがちな勘違い|ふろむだ@分裂勘違い君劇場|note
しかし、冷静に考えると、「会社を辞めて自由に生きる」って、ようは、「自分で商売する」ってことでしかないです。 具体的には、個人事業主になるか、会社を設立して経営するってだけのことです。 インフルエンサーだろうが、プロブロガーだろうが、Youtuberだろうが、全部同じです。

いやまさに、これその通りだな、と思いました。

私自身も個人事業主であるし、会社の設立もしているわけですが、現状のシステムエンジニアの個人事業主としては、わざわざ自分で営業しなくても仕事に困った事はないので、実際のところは「形式上」という感じで「商売している」という感覚はまだ強くないのだが、それでも一応案件を受けるかどうかは内容を聞いてから決めるという事にしているし、入った案件の中における自分のバリューはそれなりに意識してやっているし、今後「複業化」していきたいと考えると、「収益の上げどころ」を探っていくことになるわけで、それって「自分で商売する」って事だよなぁ、と実感し始めている所です。

これは前々から思っていたことではあるけど、一般的には会社員としての成果の上げられない人が、独立してもうまくいく可能性は高くないよね、とは思うわけですよね。まっとうな成果が上げられないから、「ある程度は成果を上げている感じ」を見せる為の一つの策として「社畜」的な振舞いがあるのかなという気もする。まあ、どんな行動が「社畜」的なのかというのも、具体的にはイマイチわからなかったりするのですが。で、だからといって、誰もが一定期間は会社員として勤めて経験を積み成果を上げて独立するのはその後にするべき、とも思っていない。会社員としての経験がなくても、ビジネスを成功させる人もそれなりにはいるでしょう。ただ、まあ、大部分の人はそうではなくて、一定の経験の蓄積とスキルを向上させる期間を以て自信をつけていく事は必要なのだろうな、と思います。

まあ、元記事にもある通り「向き不向き」だと思うので、今の自分の状況が「向いていない」と思ったら違う事も試してみればよいのではないの、という事だと思います。



「バーサタイリスト」

「バーサタイリスト」って、あんまり聞き慣れていない言葉だな、というのが率直な印象。

木村岳史の極言暴論! - 技術者はSEになるな、「何でも屋」になれ:ITpro
つまり技術者の在るべき姿は、“広く浅い”ゼネラリストでも“狭く深い”スペシャリストでもなく、“広く深い”「バーサタイリスト(多能の人)」である。

なるほど、 ”versatile” 「多才の、多芸な」からきた "versatilist" ですか。
「フルスタックエンジニア」の言い換えともとれるし、強いて言えばさらにカバーすべき領域を広げた感じですかね。

確かにそういうポジションでの仕事は「大変だけど楽しい」だろうっていうのはよくわかるし、私もできればそうなりたいね、とも思うけど、そういう機会を得られる事自体がなかなか難しいよなと感じる。
ある意味では「不器用だから」っていうのもあるし、またある意味では「器用貧乏だから」むしろ「何でも屋」的なSEになってしまうっていうのもある。

いずれにしても、まずは何かの領域で「スペシャリスト」として頭角を表して認められないことには、そもそも「バーサタイリスト」的に活躍するなんてできないんじゃないかな、多くの人にとっては、などと思います。

私の場合は、そんなわけもあり、とりあえず目先の生活の為もありで、プロジェクトの為に集まりそのプロジェクトが終われば去る、という「スペシャリスト」として当面は生きて行こうと思うのでありました。

しかし「バーサタイリスト」って、語感的にはあんまり一般的に浸透しそうな気がしないな、とか思ったりもします。まあ言葉自体はどうでもよいのですけどね。 

「SIガラパゴス」のERP導入における問題点

朝の電車の中で何気なくTwitterでつぶやいたら、記事の筆者ご本人に反応して頂きました。

記者の眼 - 「SIガラパゴス」を育んだIT部門の罪:ITpro

この話はもう何周目かな?と思うくらい、何度もグルグル回っている感もありますが、同じような主旨の話でも繰り返し訴えていくということも必要だと思うし、そういうお立場でもあると思うので、それはそれでいいと思っている。

私はフリーになってこの辺のテーマからは「斜め」方向に行ってしまったわけですが(斜めの上か下かはわからないw)、この記事を読みながらも、記事の論旨とは違う観点で思った事があるので、その辺りをメモ程度に書いておこうかと思います。

記事中で「ERPレガシー」という事に触れらている。
私もその「ERPレガシー」の作り込みに関与してきたと言える。
アドオンたくさん作ってきたな~と。まあ、それが仕事だったし。 

その点に関しては、記事のテーマにある通り、 ユーザ企業側の問題が一番大きいとは思うけど、長年ERP絡みのプロジェクトの現場にいて、それとは別の問題が2つあるなと考えてきた。

1つ目はERPのいわゆる「導入コンサルタント」の問題で、ちゃんとしたスキルとマインドを持った人が圧倒的に不足していると思う。
ERPパッケージの標準機能、業務プロセスを「そのまま使う」といっても、実際にはどこのセットアップ項目をどのようにセットアップして使っていくかということにはいろんな工夫の余地があると思っている。
だけど、できるだけちゃんと標準機能を使うようにしよう、という工夫をしようとするって事がない、そういうふうに考えられる人って少ないよな、と。
まあ、「標準機能じゃできませんね」ってことでアドオン化した方が商売になるっていうSIer側の事情も絡むのだとは思うけど。
そしてどうしてもなんらかのアドオン/カスタマイズは必要だとなったとしても、ただ普通に機能要件を実装するだけじゃない工夫の仕方がパッケージの場合はあると思うんだよね。

もう1つの問題は「スキルのある人材不足」とは裏返しとも言える話で、ERPパッケージをうまく使いこなす為に「コンサルタント」と称する高度なスキルのある人が必要って事は、そもそもERPパッケージ製品自体がまだまだイケていないんだと思っている。
色々と進化はしてきていると思うんだけど、難易度としてはむしろ上がっていると思うんだよね。

「各種セットアップをして標準機能だけで出来ます」とか言っても、実際のプロジェクトの現場でちゃんと動くようにするにはえらい大変だったりする。
ほとんどプログラミングしているみたいなものだと思う事があるけど、普通のプログラムみたいにエディタ上にシーケンシャルにロジックが見えるわけではなく、普通にプログラムを書くよりもむしろ難易度は高いと思える事もある。
それをプログラムを書かない(書けない)「コンサルタント」が対応しようとするものだから、そりゃあ炎上しますわ。。。

そんなわけで、もっと「簡単に」使えるようになる業務アプリケーションパッケージが必要なんだと思うわけです。

繰り返しますが、元記事の論旨とは違う観点の話をあえてしています。
ERPでサポートする業務プロセスがベストかどうかは本質的な問題ではなく、一つの標準プロセスに整流化することで、重複業務のカットなどの効率化を図り、一般管理費を下げることを目指す。
これ自体には基本同意していますので。
今現在あるERPがベストでないにしても、導入すると決めたからには今あるものを受け入れて、その中で工夫すべきだと思います。

時間がないので、この辺の話はまたあらためて考えてまとめてみたいと思います。

会社を辞めました

既にちょっと間が空いてしまいましたが、先日の12月15日を以って16年8ヵ月勤めた会社を退職しました。
今後はフリーランスのエンジニアとしてやっていくつもりですが、一応法人としての体裁は作ろうと思っております。

一般的には別に名の知れた会社とかではないので、そこはまあ私の事を直で知っている一部の人だけ分かればよいかと思いますが、そろそろ自分自身の記録としてブログにも書いておこうかと思った次第であります。

最近方々のブログで「退職エントリ」が書かれているのをGunosyとかから流れてきて時々見かけますが、そういうので色々書いている人って結構若くて、働いてまだ2、3年なんだけど、仕事や会社や業界のことなど様々な事についてそれなりに鋭い洞察をしていたりして、大したもんだな、と思ったりしてます。

私なんかはここまで来るのに16年8ヵ月もかかってしまいましたからね。いや、ヤバイわ、、、

技術の事だけではなくて、経営戦略とかマーケティングとかの勉強をしたり、SIerの業界の問題点とかを色々と考えたりもした上で、自分自身のやりたいこと/やりたくないこと/得意なこと/苦手なことなどを様々考えた結果、私の場合はフリーのエンジニアみたいな感じで独立するのが一番良いのだろう、と考えたのは、もう何年も前の事なのですが、色々とタイミングは図っていたら、ここまで引っ張ってしまいました、というところです。

「人月商売」の観点しかない状態では、どうしても稼働率を高める事を追求していかざるを得ないので、自分の専門性を深堀りしたり、自分自身で考えた新しい事にチャレンジしたり、という事がとてもやりづらくなってきているというのは感じておりました。

そうは言っても、SI仕事自体は色々と内容や形は変わってもなくなることはないと思いますし、そんな中で一定以上のスキルのある人を「期間限定で欲しい」っていうニーズはむしろ益々高まっていくのだとも思います。正社員である必要なくなっていくよ、って話でもあります。 要するにフリーランスで良いでしょう、と。

とは言え、いきなりフリーランスになるという決断はできずに、転職含めて色々とキャリアパス的なものを模索していたのですが、リーマンショック後の人余り状態とIFRS強制適用という流れの中で、Oracle EBSのSLA/FAH(Subledger Accounting / Financial Accounting Hub)絡みのツール開発と販売という話が出てきたので、それで単なる受託ではない今までとは異なるビジネスモデルが作れるかも!ということで、これがやれるならもうしばらく会社にいてみようかと思ってやっていました。

このプロジェクトは他ではなかなかできない経験をたくさんさせて頂いたと思いますが、結果的にその試みはうまくは行かず、「普通」の仕事に戻ることになりました。直接的には震災後にIFRS強制適用が事実上延期となったから、ということなんですけど、でも、それだけではない、と色々と思う所はあります。

そんなわけで自分がそういう「特別な」事ができる状態ではなくなったので、以前から考えていた通り会社は辞める事に決めました。既に携わっている案件は全うした上で、ちょうどキリのよいのがこのタイミングとなったのでした。で、今さら転職とかもうないなー、とも思いました。

フリーになっても当面の生活していく為の仕事内容はあまり変わらないとは思いますが、その辺りうまくやりくりしながら、新しい事にもチャレンジしていきたい、と考えております。

私自身のバックグラウンドとしてはOracle EBSのFinancials関連の経験が長くて、特にSLA/FAHに関しては内部構造を自力でかなり調べた上で、某大手製造業のプロジェクトでは様々な要件をクリアする為に実践もしたので、非常にニッチな領域ではありますが、実際のプロジェクトの現場に入るようなポジションにありながら、私ほどに詳しい人間は中々いないだろうとは思っています。その時からはちょっと時間が経ってしまったので、その後それなりに経験者は増えたとは思いますけどね。

今後については別にOracleとかEBSとかこだわるつもりは全然ないです。そもそもOracleがEBSとかFusion Appsとかどうするつもりなのか、表向きには色々言っていますけど、実際の所どうなっていくのかもよくわかりませんしね。もちろん仕事のオファーがあって自分が空いていればやるとは思いますけど。
 
なので、そんな感じで日銭を稼ぎつつ、研究開発的な活動も継続していって、何かしらイケてるソリューションを作っていきたい、とは考えております。

というわけで、そんなにすごい若いわけでもなく、勢いとか情熱とかだけではなくて、打算も含めていろんなレベルでいろんな事を考えた上での、おっさんの決断であります。中学生の時に何かで「サラリーマンにはなりたくない」と書いていた事が思い出され、感慨深いです。私はこういう決断をしましたけど、みんながみんなそうすればいいとか全く思いません。とは言え、自分の人生は自分の選択の結果だという認識だけは持ってた方がよいだろうとは思います。 

今後ともよろしくお願いいたします。
 

ノマドと社畜 ~ポスト3.11の働き方を真剣に考える
谷本真由美(@May_Roma)
朝日出版社
2013-03-09


ソフトウェア開発と業務システム開発は違うという事

しばらくモヤッとしていた事が少し言語化された感じがする。

もしSIerのエンジニアがジョブズのスピーチを聞いたら(1) - Wadit Blog.
もしSIerのエンジニアがジョブズのスピーチを聞いたら(2) - Wadit Blog.
多くの人が混同するのだが、ITという括りであたかも同じように語られるのが、業務システムの開発とソフトウエアの開発である。営業システムとか生産システムといったものが業務システムで、MSのオフィス製品だとか、DBMSだとか、パッケージのようなものがソフトウエアとすると、それぞれを開発するやり方は違うと思いませんか。
もしSIerのエンジニアがジョブズのスピーチを聞いたら(3) - Wadit Blog.
なぜ、"コードはソフトウエアを作る時に書いて、業務システムはそのソフトウエアを使って組み上げる"ことができないのでしょうか。プログラマーは、役に立つ魅力あるソフトウエア(ツール)を産み出すことに自分のスキル、意欲を傾注したらいい。そして業務システムを作る人は、業務プロセス、仕事スタイルをデザインできる人がすればいい。後者こそ本来のSIerのめざすところではないでしょうか。
もしSIerのエンジニアがジョブズのスピーチを聞いたら(4) - Wadit Blog.

よくSIの受託開発仕事をDISる文脈で「コードを書く事へのこだわり」みたいなものを語られる事に対して、 なんとなく共感する部分も感じつつ、同時に違和感も感じる事が多いのだけれども、それはそういった文章がここで言われている「混同」に無自覚だからなのかな、と思った。
具体例挙げられるほどに覚えてはいないのだけれども。

ソフトウェアによる様々なサービスやプロダクトが登場してくる現在及び今後の状況において、SIの現場ではできるだけ「コードを書かない」でソリューションを確立・提供すべきなんだと最近強く思う。
エンジニアとしてはコードを書くスキルを磨いて実装力を持ち続ける事は必要だとは思うけど、SIとして顧客に提供する価値って「コードを書く」事じゃないよ、と思うわけです。

スクラッチ開発で人月積み上げた方が儲かるっていうのはその通りなんだけど、そんなコストをかけ続けられる顧客自体がどんどん少なくなって先細るのは明白なので、こういう視点も一つの例として、SIでどんな価値を提供すべきなのかを考え転換していく必要があると改めて思った次第です。

そういう取組をしたとしても人月の呪縛から逃れるのは難しいとも思っている。
まあ、個人的には人月見積を全面否定する気はないのですが、持続可能なビジネスとして成立させる為には同時に考えていくべきテーマではあるよね。

SI仕事の区切りにて雑感

昨年より関わってきた仕事に一段落着いたので、雑感を少々記録。 
久々に開発プロジェクトの現場に戻り、しかも相当なビッグプロジェクトだったので、現場ならではの知見も相当得られたと思います。反面教師的な意味も含めて。

私自身は既に燃え上がっている所に「火消し」として召集されて、自分の専門分野の火を消し続けるだけで手一杯な日々でしたので、全体的な観点では動きようもなく、最後まで全体像はよくわからない感じでしたが、これもまた大組織らしく分業化された仕事の回させ方なのかな、と思いました。

大組織の通常の業務オペレーションにおけるセクショナリズム的考え方がプロジェクト体制上の各チームにも持ち込まれて、担当領域の境界線があいまいな部分の課題等では、それぞれが勝手に定義した自分達の領域の考え方に基づき仕事と責任を投げ合う様がそこらじゅうに見られて、傍目に見ていて爽快な感じすらありました。
普通はそういう所はプロマネが仕切るべきものなんでしょうけど、プロマネ的機能自体がそれなりの組織になっている事もあり、その投げ合いに参加してしまっているような事になっていたりとか。

こういうプロジェクトが多くの会社で発生している、とか考えるといろんな意味でぞっとしますね。
IT投資として何を目的にやっているのかがプロジェクトで実際に手を動かしている関係者に浸透していない、という事が根本的な所にはあるなのかなと思います。
目先のスケジュールや課題数減らしの為の近視眼的な対応で結果的に無駄になった作業とか相当なものです。
いつまでもこんな事は続けていられなくなりますよ、きっと。

プロジェクト自体はまだまだ続いていくようですので、そのプロジェクトや会社自体が今後どうなっていくのかは遠くから生ぬるく見守っていきたいと思います。

システム開発的な観点でも過去に何度も見たような問題がまた繰り返されている感も多々あり、ましてERPを使っているんだから、もうちょっとどうにかできないものかな、という思いもあります。
もちろんそれぞれに違う会社が時期をずらして同じような事をするからこそその道のプロとしての仕事があるという面もあるのではありますが、こういう所をもっとうまくやれるようなSIのソリューションを何か実現できないか、というのは今後のテーマとして継続して考えていきたいと思っています。

「システム部門への不満」と言うけど

SIerのビジネスモデルの話と表裏一体とも言えるシステム部門への「ダメだし」のお話。

経企部門が吐露する「システム部門への不満」 - システム部門再生:ITpro

これをネタに何か書こうと思いつつ、時間とれなくて寝かしておいたんですが、あらためて読んでみたら当初と違う事を思いましたので、その辺について書いておこうかと思います。

システム部門が経営に貢献する為には自社のビジネスやその業務プロセスに対する理解が不可欠で、システム活用してよりよくしていく事に積極的に関与すべきというのはもちろんその通りだとは思います。
この記事では経営企画部門が「経営層に一番近いポジション」としていろいろダメだししているわけですけど、どこか他人事のような物言いがすごく違和感を感じるんですよね。
「御用聞き」とか「コミュニケーションスキルがない」とか「積極的な提案がない」とか漠然とした不満を言っていても仕方ない。経営企画的には、自社の事業のバリューチェーンのどこをどうすべきかという具体的な要求があって、それにどう応えていくかを業務とシステムが一緒にやっていく必要があると思うわけですね。一方的にシステム部門がダメとか言っている場合じゃないというか。

勿論、そういうプロセスの中でシステム部門の人間も積極的に貢献していく事は必要だと思います。
そういう取り組みはしつつも、そういう所から離れてシステム部門から何か提案するとしたら自分事である運用や保守の改善ネタになりがちだろうし、その辺て特に理解されづらい所かもしれないですよね。タダでさえコストとしか見られていない所だし、ビジネスへの貢献という観点ではさらにわかりづらい。

まあ、メディアのインタビューへの対応だからあまり具体的な事を話していないだけで、実際にはいろいろなやり取りをしていることとは思いますけど。

それから、業者に「丸投げ」していて実態を把握できていないから積極的に貢献できるような動きができないという話もあって、だから「内製化」という話もありますね。まあ、 対応に必要な期間や十分なスキルのある要員の手配等の制約もあるので、業者はうまく使えばいいと思いますけど、そういう制約さえ取っ払えば自前でもできる くらいの技術力がないと本来的な意味での業者の管理とかコストの妥当性とか評価できないのだと思います。それはシステム部門をなくして経営企画の中にシステム企画の機能を持たせるとかしても、部門の割り方の問題だけで結局同じ事が必要になるんではないかと思います。

というわけで経営企画とシステムの部門間対立的な構図で捕らえている事自体がそもそもどうなの?と思った次第です。

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